多事雑言

日常の出来事などについて、無責任に記述していきます。

東京メトロ半蔵門線九段下駅 ベビーカー挟み込み事故について

既に既報の通り、4日に東京メトロ半蔵門線九段下駅で、

中央林間発押上行電車(10両編成)がベビーカーをドアに挟んだまま発車した。

幸いベビーカーに子供は乗っておらず、怪我をした人もいなかったとの事だった。

半蔵門線、ベビーカー挟んだまま発車 幸い中は空:朝日新聞デジタル

 

車掌の対応に非難が集中

これは当然といえば当然だろう。

車掌は出発するにあたって、

「信号機が進行を指示している」こと、「出発時刻になっている」こと、

「旅客の乗降が終了している」ことなど、

列車を出発させてもよいとなったら運転士に出発してよいと合図をすることで

列車は出発する。

今回は、「旅客の乗降が終了している」ことを確認しきれていないという点で、

車掌への非難が集中している。

東武鉄道では、

お客様の安全のために|2015年 安全報告書|東武鉄道 というページで

運転士・車掌について、

運転士は主に前方に異常がないか注視するとともに、

信号や標識を確認して列車を運転します。

車掌は車内および列車後方の確認ならびに駅到着・出発時における

ホームのお客様の状況を確認し、列車の安全運行に努めています。 

 と記している。

また、今回の事故について国土交通省は鉄軌道事業者に対して、

列車出発時の安全確認の徹底について指導する文書を発出している。

www.mlit.go.jp

このページの中で、

原因については、東京メトロより、列車を発車させる際の車掌による

安全確認が不十分であり、また、発車直後に車内非常通報ブザー

及びホーム非常停止ブザーが鳴動していたにもかかわらず、

車掌が適切な措置を講じなかったことである、との報告を

受けているところ 

と車掌の車内非常通報ブザーとホーム非常停止ブザーの鳴動に対しての措置が

適切ではなかったとしている。

 

ブザー鳴動に対しての措置

上の引用で赤文字でかつアンダーラインまで引いたのには、

自分なりに意味があるのである。

列車車内にあるのは「車内非常通報ブザー」で、

ホームにあるのは非常停止ブザーである。

つまり列車内にあるのはあくまでも非常事態を通報するためのものであり、

列車を止めるものではないのである。

ホームにあるものは発報したら駅付近の列車を緊急停止できるのが一般的だ。

安全対策 | 東京都交通局

例えば、都営地下鉄の場合は、

非常停止ボタン

お客様がホームから線路に転落した場合などに、このボタンを押すことにより、

駅付近の列車を緊急停止することができます。

である。

しかし、車内非常通報ブザーは、

非常通報器

全車両の客室に非常通報器を設置しており、列車内で異常事態が発生した場合に、

お客様から乗務員または運輸指令所(三田線大江戸線のみ)に通報できるように

なっています。

 なのだ。

つまり、ホームの非常停止ブザーの鳴動を無視したことは非難されるべきだが、

車内非常通報ブザーを次の駅で対応しようとしたことは、

必ずしも批難されるべきではないのである。

例えば、ホーム上で火災が発生した(なんてあり得るのかと思うが・・・)、

ホーム上に毒物が撒かれた(地下鉄サリン事件なんてものがあったのでないとも限らない)など、

列車を停止させないほうがよいこともあるのだ。

あるいは走行中に車内非常通報ブザーが発報された場合、

これも仮に急病人がいた場合、その場で停止して再度安全確認をして出発するより、

状況を聞き、列車の指令所の指示を仰いで対応したほうがよいのである。

列車を一度線路上で異常停止させると、安全確認が必ず必要になる。

もちろん、車内の非常通報ブザーを押した人は非難される理由はないし、

私も非難するつもりはない。

むしろ、よく押してくださいましたと思う。

危険を発見したら、躊躇せず押して欲しい。

この場合の車掌の正しいであろう対応法は、

対話式の非常通報器であれば、車掌は何があったか聞くべきであろう。

最近は減りつつあるが、単に押し釦で異常を知らせるだけのものだと、

停止させた上で状況確認になるのだろうか。

 

まあ、それ以前にホーム上の安全を確認できていなかったという最大の落ち度が

車掌にはある。

そして、ホーム上の非常停止ブザーの鳴動を無視したのは完全にアウトだ。

というより、ホーム上の非常停止ブザーを作動させても周囲の列車を含めて

列車が停止するシステムになっていないことも問題だ。

 

ちなみに、書いていることと矛盾するではないかと言われそうだが、

こんな記事もあった。

news.livedoor.com

JR東日本の社員の方の話として

「あのボタンは列車を止めるのではなく、安全を確保するためのボタン。『電車が止まってしまう』のではなく、『電車が止まってくれる』ボタンなので、押すことを躊躇しないでほしいです。

 なのだそうだ。

 

そして、こういうトピック的な事故が発生するとマスコミはあれこれ叩く。

毎日新聞が指摘する問題点

http://mainichi.jp/articles/20160409/dde/001/040/051000c

には、

  1. 挟まれたベビーカーをドアのセンサーが検知せず
  2. 車掌は発車前と跡に目視確認したが気付かず
  3. 車内の非常ボタンが押されても非常ブレーキをかけず
  4. ホームの非常ボタンが押されても非常ブレーキをかけず

まず1.については毎日新聞が記事で書いているように、

JR東日本によると、同社の車両はドアに

20〜30ミリ以上(検査基準値)の物が挟まると異常を検知して

発車しない仕組み。東京メトロの15ミリ(同)に比べ緩やかなのは、

服などにも反応しかねないからだ。 

というように、服程度のものを挟んで発車できないなどとなると

首都圏のラッシュ時に電車があちこちで止まりまくるだろう。

2.は何も書かれていないというか、改めて書くまでもなく

車掌の安全確認不足でしかない。

3. 4.に関しては、私がブザー鳴動の措置で書いたような事が書いてあった。

東京メトロは自動停止するボタンを導入していない。

地下鉄の駅は閉ざされた空間で「火災時に一般乗客が押して、

火災現場に停車してしまう恐れもある」(担当者)ためだ。

同社は「危険度の見極めと緊急停止の判断は、

専門の訓練を受けた乗務員らに委ねるべきだ」との考えを取っているという。

 これは実は上で紹介したlivedoorニュースで出てきたJR社員の方も

具合の悪い人がいたら、救急車を呼びますね。

非常ボタンは救急のダイヤルみたいなもので、あとは専門家である駅員が

対応します 。

と書いている。

確かに今回はその専門家の車掌が機能してないではないかと言われそうだが、

そんなことのほうが少ない。

そして、このような事故が起こると必ず言われるのはホームドアの設置なのだが、

残念な事に半蔵門線に乗り入れている東急田園都市線の車両は一部に6ドア車がある。

6ドアと4ドア、これを同時に捌くことができるホームドアにするには、

こんなの(1)とかこんなの(2)にしなきゃならないのだが、

(1)方式はコストがかかるし複雑である。

(2)方式は安価だが効果にやや疑問が残るということになる。

しかし、

tabiris.com

ということで、6ドア車がなくなり始めるのだが、すぐに無くなるものでもない。

 

ということで、やはり専門家の駅員や車掌、運転士に

安全確認を徹底してもらうしかないのだろう。

そして、その専門家がミスを犯したのだから、ここぞとばかり批判したいところだが、

実はそんな簡単な話ばかりではないということも頭に置いておきたいものだ。