非正規雇用と正規雇用の格差は広がり続ける
以前、
で、正規・非正規雇用は分断されているということを取り上げた。
帝国データバンクの調査で、
2015年度に賃金改定を実施した企業は65.4%で、
実施しなかった企業の30.2%を大きく上回った。
一方、2016年度の賃金改善の見込みについて は
「ある」と回答した企業は46.3%で、見込みが「ない」と回答した企業は23.7%だった。
「わからない」と回答した企業は30.0%。
2016年度 の賃金改善について検討中の企業が相当数あるものの、
約半数の企業が賃金改善を計画しており、賃金改善の動きは高水準で推移する
と同社では分析している。
アベノミクス万歳・・・で良いのだろうか?
どうもそうはいかないようだ。
産労総合研究所は2月9日、「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」で、
非正社員の賃金に関する調査結果も明らかにしているのだが、
調査対象になったのは1部・2部上場企業と、
過去に調査で回答のあった同研究所の会員企業から任意に抽出した3,000社で、
回答のあった146社のデータを集計した。調査期間は2015年11月中旬から12月下旬。
それによると、2015年に非正社員の「賃金を増額した」企業は53.4%、
「手当を増額した」企業は1.4%で、54.8%の企業が非正社員の待遇を改善していた。
やっぱりアベノミクス万歳なのか?
この賃金の増額はどの程度の増額で、増額した理由が気になるところだ。
理由などにはこの調査で触れられていなかった。
春闘の調査なので、あくまでも正規雇用の給与について考えることが主になるはずで、
そこは理解できる。
そのため非正規雇用に関する記述はA4で半分以下しか割いていない。
しかもその1/3はグラフだ。
それはともかく、
2015 年の非正社員の処遇改善状況をみると、2014 年は41.7%だった
「賃金を増額した」は、2015 年では53.4%と、11.7 ポイント増加した。
2013 年(25.2%)からは、28.2 ポイントの大幅増である。
こう読むと非正規雇用の賃金は増額されているように思える。
しかも回答した企業の半分以上が増額したと言っているのだから、
そう思える・・・わけがない。
1円でも増額すれば増額だからだ。
よく聞くのは派遣社員の時給があがった→けど時給で20円くらい。
月間8時間、20日としたら月間で3,200円だ。
関東エリアの派遣社員の平均的な時給は1,300円だそうだ。
そうすると3200/(1300*8*20)*100=1.54(小数第3位を四捨五入)。
月間の上昇率はたったの1.54%なのだ。
ちなみに、この調査によれば正規雇用の定期昇給の平均額は4,793.2円で平均率は1.8%。
非正規雇用も正規雇用も上昇額、率ともそれほど大きな差はない。
しかし、非正規雇用はボーナスがないので年間の増額が
3,200円*12ヶ月38,400円である。
正規雇用はボーナスがあり、
中小企業で1ヶ月*2回とすれば2ヶ月分、4,793円*14ヶ月=67,102円(非正規の約1.7倍)、
大企業で2ヶ月分*2回とすれば4カ月分、4,793円*16ヶ月=76,688円(非正規の約2.0倍)。
率では変わらなくても、額に直せば結構格差は大きい。
非正規雇用ほど自由はないということをよく聞くが、
そうではない人もいる。というかそういう人はかなりいるのではないか?
つまり、能力が同程度でも雇用形態だけで区別され低賃金で働かされるのだ。
2016年の見込み
2016年の見通しについては非正社員の「賃金を増額する予定」が26.7%、
「手当を増額する予定」が2.1%で、28.9%の企業が非正社員の待遇改善を検討していた。
「見直す予定はない」は30.1%で、「現時点ではわからない」は37.7%だった。
増額されるのはうれしい。
しかし、
自社の賃上げに対するスタンスは、「賃上げを実施する予定」が58.9%と、
前回調査(57.6%)から1.3ポイント微増したものの、
ここ3年は同水準で推移している。
一方、「賃上げは実施せず、据え置く予定」と回答した企業は
前回調査(7.6%)から減少。こちらは2年連続で減少している。
非正規の給与を増額する予定は正規雇用の半分なのだ。
正規雇用の賃上げは政府からの圧力もあり上げざるを得えないのだが、
非正規雇用にはそのような圧力もないので、
単に人手不足の解消のために非正規雇用を繋ぎ止めるためのだろう。
上がればよいではないかと言われると思う。
しかし、上げ幅も小さく、単に引き止めるために時給増額するだけで、
用済みになったらいつでも切ればいいやと思っているのではないだろうか?