多事雑言

日常の出来事などについて、無責任に記述していきます。

ブラックバイト認定で業界危機、塾講師不足の深刻 を塾講師が読んでみた

diamond.jp

 

記事にもあるように、

講師の需要増加の一因として、2000年代初頭から個別指導方式の塾が増えてきたことが挙げられる。

個別指導だと、講師1人に対し生徒2~3人が標準的な授業の組み方である。

塾によっては、料金は上がるがオプションとして講師1人に生徒1人ということもできる。

一方で、大手チェーン塾でもグループ指導としている所は、講師1人に対して、

どれだけ多くても15人程度に抑えている。

もちろん、もっと多い人数で大教室を使う塾もある。

が、そのような塾は減ってきているようだ。

個別指導塾は雨後の筍のように乱立している。

 

授業を支えるのは学生バイトか非正規雇用

個別指導塾の授業を担当するのは学生のバイトであるというのは、ほぼそうだ。

huwahuwasan.hatenablog.com

でも書いているのだが、学生のバイトの講師がダメなのではない。

また、塾講師の派遣会社というものがあり、大手塾の中には派遣講師もいる。

よく個別指導塾の教室長に大学卒後で入社半年くらいでなってしまうというのがあるのだが、

その個別指導塾の運営会社の正規雇用者はその教室長のみであるというのも個別指導塾あるあるだ。

 個別指導塾でなくとも、多くの教室を運営しているところだと、

いわゆる拠点校(ブロック長などが在籍する比較的規模の大きい校舎)以外は、

正規雇用の社員は教室長だけで、他はバイトか派遣社員というのは意外とある。

正社員はどこにいる?

どこの教室にもいる。

教室長として在籍している。

しかし、この正社員の役割は授業をすることよりも、教室運営、

というよりも、教室の営業という側面が強い。

現に「教室長募集」という求人を見るとはっきりと

「授業は講師が行います。授業を担当することはありません」

と書いてある。

まあ、学校でも校長先生が授業しないでしょ・・・といえばそうなのかもしれない。

しかし、校長先生との違いは、民間人校長でなければ教職の経験があり昇進試験を経ているので、

授業をしたことがあるのだが、この「教室長」は授業をしたことがなくてもなれる。

 

塾講師はブラックバイトに認定されるぐらいなので・・・

社員にとってもブラック企業という所は多い。

サビ残はもちろん休日もまともに取れない。

帰るのは終電・・・ならマシな方だ。

終電後でも仕事をして始発で帰るなんていう人も稀にいる。

あるいは自動車での通勤をしていたり、徒歩で通える程度に近い所に住んでいるので、

始発では帰らないまでも、夜中に家路につくのはよくある話だ。

 

ちなみに、塾講師がブラックバイトに認定されるのは、

塾は競って値下げし、授業料の低価格化が進行しています。環境の変化により、講師の報酬も上がらず、10年前と比べて塾講師バイトの魅力が低下している 

ということと、

法令についてよく知らないまま運営し、結果として無賃労働をさせてしまう中小の塾も一部に存在する。

ということで安価に使い倒そうとしているからだろう。

さらに、なぜか学生のアルバイトなのに男性はスーツ、ネクタイ着用、女性もスーツあるいはカジュアルすぎない服装を求められる。

保護者に学生だとさとられないためだ。

そして、大学生であるということを言ってはいけないというマニュアルも存在する。

挙句、学生のアルバイトなのに(?)やたらとハイレベルな授業スキルを求められ、

よく分からないけど無駄に責任感を持つことを強要されるという、理不尽な待遇を受けることが多くなってきたことからも

ブラックバイトであるということが分かると思う。

元記事には

中小の塾も一部に存在する

とあるが、大手塾でも存在する。

 

危機はバイトだけではない

上にも書いたような状況なので、正社員のなり手もかなり少ない。

私の勤務する塾でもアルバイト、正社員を含め講師を募集しているが、

応募者は少ないそうだ。

しかし、授業は待ってくれない。

すると、1人の講師が同時並行で2コマ担当しているという事が発生する。

これを「分身」と言う。

もちろんある程度ベテランがやることが多い。

問題演習と講義を交互に行うことで、なるべく授業に対して生徒にロスがないようには配慮するが、

そもそも1人で2コマ担当していることに無理があるのだ。

こんなことなども教育産業に対しての情熱を削ぐ。

そして、正社員の講師を辞める人は多い。

介護職の離職率も高いそうだが、教育産業の離職率も高い。

ちなみに

大手予備校でも個別指導を行っている所はある。

現役バリバリの予備校講師が担当することもある。

(かなり少ないが。)

私が勤務している塾でも人手不足が顕著である。

これは社員・バイトともに応募が少ない、あるいは応募しても書類選考で不採用になったり、

面接で不採用になったりすることは多々ある。

あるいは、飛ぶ人もいる。

この時の「飛ぶ」は

dictionary.goo.ne.jp

ではない。

こっちだ。

実際、私が現在勤務している塾では2人飛んだ。

それも、それなりのベテランでも飛ぶのだ。

 

というわけで、ブラックバイトに認定されるような業界では、

社員の扱いについてもブラック企業のそれになる。

 

元記事ではバイト離れだけで論じているのだが、学生のバイトだけではなく、

社会人講師の不足も深刻な問題なのだ。

(念の為に書きますが、決して記事の批判をするつもりはありません。

学生がバイトをしなくなったというデータは意外だと思ったので。)

 

以前は塾に通わせたいお子様がいらっしゃるご家庭への警鐘と見せかけた、

勤務先批判(笑)であるが、今回は塾で仕事をしたいと考えている方向けの警鐘みたいな感じです。